「接客しかやってきていないから、事務なんて無理かもしれない」
「パソコンがほとんど使えないので、応募する資格がない気がする」
こんにちは、めくると申します。中小企業で採用の仕事を10年以上担当し、今も毎月50件ほどの履歴書に目を通しています。
エステやマッサージ、販売や飲食業から事務職を目指す方の書類を、私はたくさん見てきました。
その中には、パソコンスキルがほとんどないのに採用された方が何人もいます。
何を買われたのか。人と関わる力です。
そして、その力があることは、自己PRの文章よりも先に、履歴書そのものから伝わってきます。この記事では、その理由と書き方をお話しします。
パソコンスキルは、あとから覚えられます
先にはっきりさせておきたいことがあります。
エクセルの関数は、覚えれば使えるようになります。半年もあれば十分です。
一方で、お客様の様子を見て先回りする力や、怒っている相手を落ち着かせる力は、教えて身につくものではありません。
採用側から見ると、順番はこうです。
- 教えれば身につくもの … パソコン操作、書類の書式、社内のルール
- 教えるのが難しいもの … 人への気配り、落ち着き、頼まれる前に動く姿勢
だから、パソコンが得意でなくても採用されることがあるのです。
もちろん、パソコンが使えたほうが有利なのは事実です。ただ、それがないから応募できない、ということはありません。
未経験から事務職を目指すときの履歴書の作り方は、こちらの記事をご覧ください。
「コミュニケーション能力があります」では伝わりません
ここからが本題です。
接客経験のある方の履歴書で、いちばん多いのがこの書き方です。
もったいない例
「前職の接客業で培ったコミュニケーション能力を活かし、貴社に貢献したいと考えております。」
とてももったいない一文です。理由は2つあります。
ひとつは、この文章を書ける人が多すぎること。接客経験のある応募者は、ほぼ全員が同じことを書きます。並べたときに区別がつきません。
もうひとつは、「コミュニケーション能力」が何を指すのか分からないこと。
明るく話せることなのか。相手の話をよく聞けることなのか。怒っている人を落ち着かせられることなのか。全部違う力です。
直すコツは、場面を書くことです。
直した例
「エステティシャンとして7年間、一日平均4名のお客様を担当してまいりました。施術中の会話からご要望をうかがい、次回のご提案につなげることを心がけておりました。ご不満をいただいた際も、その場で内容をうかがって責任者に共有し、対応を引き継ぐ形をとっておりました。」
「コミュニケーション能力」という言葉は、一度も使っていません。それでも、この方が人とどう関わってきたかは十分に伝わります。
抽象的な言葉を使わずに書けたときのほうが、伝わる量は増えます。
いちばん強いのは「相手の立場で書けている」こと
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
履歴書そのものが、「相手の立場に立てる人かどうか」のテストになっています。
採用側は、書類を読みながら無意識にこう考えています。
この方は、読む人のことを考えて書いているだろうか
それとも、自分の言いたいことだけを書いているだろうか
そして、これは接客をしてきた方がいちばん得意なはずのことなのです。
お客様が何を求めているかを考えて動く。それを、履歴書でもやればいいだけです。
求人票から「相手のニーズ」を読み取る
やり方は難しくありません。求人票をお客様だと思って読んでください。
たとえば求人票にこう書いてあったとします。
- 「電話応対が中心です」
- 「少人数のため、幅広い業務をお願いします」
- 「お客様からのお問い合わせ対応もあります」
この3行から、応募先が困っていることが見えてきます。電話が多くて手が回っていない。人が少ない。お客様対応を任せられる人がいない。
だとしたら、書くべきことは決まります。
直した例
「販売職として、一日20件ほどの電話でのお問い合わせに対応してまいりました。少人数の店舗でしたので、レジ・在庫確認・発注・売上報告まで一人で担当しておりました。人数の限られた職場で、今何が一番必要かを見極め、幅広く動くことには慣れております。」
求人票に書かれていた困りごとに、ひとつずつ答えている形です。
「自分にはこれができます」ではなく、「あなたが困っていることに、私はこう応えられます」。この向きにするだけで、書類の通り方は変わります。
「自分のような人と働きたいか」を考えてみる
もうひとつ、書き終わったあとに試してほしいことがあります。
自分が採用する側だったら、この履歴書の人と一緒に働きたいと思うだろうか。
読み返して「思わないな」と感じたら、まだ直せるところがあります。逆に「この人となら大丈夫そうだ」と思えたなら、それは相手にも伝わります。
接客の経験を、事務の言葉に置き換える
ここからは手を動かす話です。接客でやってきたことは、そのままでは事務の言葉になっていません。置き換えてみてください。
| 接客でやってきたこと | 事務の言葉にすると |
|---|---|
| レジ締め・売上金の管理 | 金銭の取り扱い、日次の集計 |
| シフト作成 | 人員の調整、日程管理 |
| 在庫確認・発注 | 数量の管理、発注業務 |
| 予約の受付・変更 | スケジュール管理、電話応対 |
| クレーム対応 | トラブル対応、一次対応と引き継ぎ |
| 売上報告・日報 | 報告書の作成、数字の入力 |
| 新人への指導 | 業務の説明、手順の共有 |
この表の右側は、すべて事務の仕事で使う言葉です。
「レジ締めをしていました」と書くより、「日次で売上金を集計し、報告しておりました」と書いたほうが、読む側は自分の職場の仕事に置き換えて考えられます。
やってきたことを変える必要はありません。呼び方を変えるだけです。
職務経歴書は、順番を組み替える
履歴書に書ききれないことは、職務経歴書に書きます。ここでも考え方は同じです。
時系列で並べるのではなく、応募先が知りたい順に並べてください。
もったいない例(職務経歴書)
【職務経歴】
〇〇株式会社(20〇〇年4月〜20〇〇年3月)
エステティシャンとして施術を担当。
フェイシャル、ボディ、脱毛の各コースを担当しました。
施術の中身が中心になっています。応募先が事務職の求人であれば、この部分はあまり判断材料になりません。
直した例(職務経歴書)
【職務経歴】
〇〇株式会社(20〇〇年4月〜20〇〇年3月)
エステティシャンとして施術を担当。あわせて下記を兼務。
・予約の電話応対とスケジュール管理(一日平均15件)
・売上の日次集計と本部への報告
・備品の在庫確認と発注
・新人スタッフへの手順の説明、マニュアル作成
【事務職で活かせること】
予約管理と売上集計を通じて、決まった時間に決まった処理を行う仕事に慣れております。
電話でのご要望を正確に聞き取り、記録して共有することを日常的に行ってまいりました。
施術の話は一行に減らし、事務につながる部分を前に出しています。
書いてある事実は同じです。どれを大きく見せるかを、応募先に合わせて変えているだけです。
接客以外でも、意外と事務に向いている経歴があります
ここまで接客業を例にお話ししてきましたが、同じ考え方が使える経歴はほかにもあります。
意外に思われるかもしれませんが、音楽関係の仕事をされてきた方は、事務に向いている方が多いです。
今まで演奏だけをしていればいい、という方はほとんどいませんでした。多くの場合、こういうことを兼務しています。
- 問い合わせのメール・電話対応
- 出演者やスタッフとのスケジュール調整
- 公演の運営に関する各種の手配
- 自分で企画を立てて動くこと
これは、そのまま事務局の仕事です。そして何より、誰かが用意してくれるのを待つのではなく、自分で動いて形にしてきた方が多い。
中小企業の事務では、この「自分で動ける」がとても重要です。指示待ちではなく、必要なことに気づいて手を打てる方は、どこでも歓迎されます。
音楽に限らず、一見すると事務と関係なさそうな経歴でも、中身を分解すると事務の仕事とつながっていることがよくあります。
ご自分の経歴を「施術」「接客」「演奏」といった一語でまとめず、その周りでやっていたことまで書き出してみてください。
今日のチェックポイント
ご自分の履歴書を、この6つで確認してみてください。
- 「コミュニケーション能力」という言葉に頼らず、場面を書いたか
- 求人票を読んで、応募先が困っていることを書き出したか
- その困りごとに答える形で、自分の経験を並べたか
- 接客の経験を、事務の言葉に置き換えたか
- 職務経歴書を、応募先が知りたい順に並べ替えたか
- 読み返して「この人と働きたい」と自分で思えるか
パソコンスキルは、あとから足せます。
先に伝えるべきなのは、あなたが人とどう関わってきたかのほうです。 そこは、これから身につけるものではなく、すでに持っているものですから。


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