「事務の経験がないから、履歴書に書くことがない」
「未経験可の求人に応募しても、返事すら来ない」
こんにちは、めくると申します。中小企業で採用の仕事を10年以上担当し、今も毎月50件ほどの履歴書に目を通しています。
未経験から事務職を目指す方の履歴書を見ていて、いつも思うことがあります。
書くことがないのではなく、書けることに気づいていないだけです。
別の仕事をしてきた方は、事務の仕事で必要な力の多くをすでに持っています。それが履歴書に書かれていないから、伝わっていないのです。
この記事では、未経験者でも何をどう書けば「この人なら任せられそうだ」と思ってもらえるのかを、順にお話しします。
先に知っておいてほしいこと:事務職は応募が集中します
書き方の前に、ひとつだけお伝えしておきます。
事務職の求人は、応募が集中します。 とくに「未経験可」「土日祝休み」といった条件がそろうと、一つの求人に何十人と集まることも珍しくありません。
これは、落ちた理由があなたにあるとは限らない、ということです。
書類が通らなかったとき、「自分には価値がないのかもしれない」と受け取ってしまう方がいます。でも実際には、同じくらい良い方が何人もいて、そのうち数人しか面接までたどり着けないという事情のほうが大きいのです。
だからこそ、やることは2つだけです。
- 履歴書を通りやすい形に直しておく
- 落ちても諦めず、次に応募する
この記事は、前者のためのものです。
「事務」にも種類があります
もうひとつ、応募の前に知っておくと得なことがあります。
ひとくちに事務といっても、中身はかなり違います。
- 一般事務:電話応対、来客対応、書類作成、ファイリングなど。企業規模によっては社会保険や施設管理など、幅広く担当します
- 営業事務:見積書や請求書の作成、受発注、営業担当のサポート。社外とのやりとりが多めです
- 経理事務:入出金の管理、伝票の処理、月次の締め。数字を扱う正確さ・几帳面さが求められます。社内の方とのやり取りも意外と多めです
未経験から入りやすいのは、一般事務と営業事務です。
そして大事なのは、どれに応募するかで、書くべきことが変わるということ。営業事務なら「お客様とのやりとりに慣れている」が効きますし、経理事務なら「数字を扱うことに抵抗がない」が効きます。
求人票の仕事内容をよく読んで、そこに書かれている仕事と自分の経験がつながる部分を探してください。それが、そのまま履歴書に書く材料になります。
事務のスキルは、もう持っていることが多い
未経験の方の履歴書で、いちばんもったいないのがここです。
もったいない例
「事務は未経験ですが、一日も早く仕事を覚え、貴社に貢献できるよう努力いたします。パソコンの基本操作はできます。」
やる気は伝わります。ただ、この文章では採用側は何ひとつ判断できません。
「パソコンの基本操作」が何を指すのか分かりませんし、覚えるまでにどれくらいかかるのかも見えないからです。
未経験可の求人に応募が来る時点で、経験がないこと自体でマイナスになることはありません。
見ているのは、まったくの経験ゼロなのか、それとも近いことをやってきたのか。何ができないかではなく、何がうちの仕事に使えそうかを探しながら読んでいます。
そして、そのヒントを自分から出してくれる方には、「この職場に合わせて動いてくれそうだ」という印象を持ちやすくなります。書かれていなければ、採用側は探しようがありません。
そして、その答えになる材料を、多くの方がすでに持っています。
- ビジネスメールを書いたことがあるか(取引先への連絡、予約の確認など)
- 電話応対をしたことがあるか(取り次ぎ、問い合わせ対応、クレーム対応)
- エクセルで何ができるか(四則計算、合計、関数を使った集計)
- ワードで何を作ったことがあるか(案内文、報告書、簡単な書類)
このどれかに心当たりがあれば、それは立派な事務スキルです。書いてください。
直した例
「事務職は未経験ですが、前職では取引先へのビジネスメールを毎日10件ほど作成し、電話の取り次ぎと問い合わせ対応も担当しておりました。エクセルは四則計算と合計(SUM)を使った売上集計表の作成まで対応できます。」
「未経験ですが」の一言は同じです。そのあとに具体的な中身があるかどうかで、読む側の受け取り方はまったく変わります。
パソコンに自信がないときは
「エクセルは正直あまり触っていない」という方もいると思います。その場合は、これから身につける姿勢のほうを書いてください。
直した例
「エクセルは表への入力と合計までは対応できます。より業務に活かせるよう、現在は市販のテキストで関数の学習を進めております。」
嘘を書く必要はありません。今できることと、今やっていることを並べるだけで十分です。
なお、パソコン操作に不安がある方は、MOSのような資格を取るのもひとつの方法です。ただ、資格がないと応募できないわけではありません。書店で一冊テキストを買って手を動かすだけでも、書ける内容は増えます。
履歴書は、パソコンで作ってください
これは事務職を希望する方だけに当てはまる話です。
事務職に応募するなら、履歴書はパソコンで作ったものを出しましょう。
理由は単純で、それ自体がパソコンスキルの証明になるからです。「ワードが使えます」と書くより、ワードで作られた履歴書が届くほうが早い。
昔は手書きが当たり前でしたし、今も「手書きのほうが気持ちが伝わるのでは」と考える方がいます。ただ、応募先がパソコンを使う職場なのであれば、パソコンで作ったほうが応募先の仕事に近いのです。
もし手書きで出す場合は、ひとつだけ工夫を。
自己PRなどの空白が広いスペースは、定規で薄くアンダーラインを引いてから書くと、文字がまっすぐ並びます。
行が斜めに下がっていく履歴書は、内容以前に読みにくく、それだけで印象を損ねてしまいます。書き終わったら消しゴムで線を消してください。
これでも几帳面さを表現できます。
年代によって、押すところが変わります
未経験からの事務転職は、年代によって効くアピールが違います。
20代〜30代前半の方
若さと人当たりのよさが、そのまま強みになります。接客や販売の経験があれば、人と接することに慣れているという点が評価されます。
事務経験を重視する求人を除けば、この年代は比較的通りやすいです。未経験からの事務転職を考えているなら、早いほど有利というのは事実です。
30代後半以降の方
ここからは、少し書き方を変えたほうがいいです。
「初心者です」という雰囲気を出さないでください。
この年代に採用側が期待しているのは、素直さや伸びしろより、落ち着いた対応力です。
もったいない例
「事務はまったくの未経験ですので、一から丁寧に教えていただきながら覚えていきたいと考えております。」
謙虚な良い文章に見えますが、読む側には「教える手間がかかる方」としか伝わりません。
直した例
「販売職として12年間、クレーム対応や複数の予約が重なった際の調整を担当してまいりました。落ち着いて対応することには慣れておりますので、来客と電話が重なるような場面でも冷静に処理できると考えております。」
事務の実務は未経験でも、そこまでに仕事で培ってきた対応力は未経験ではありません。そこを前に出してください。
志望動機で気をつけたいこと
未経験からの事務職では、志望動機でつまずく方が多いです。
もったいない例
「立ち仕事で体力的に厳しくなってきたため、腰を据えて長く働ける事務職を希望しております。」
正直な気持ちですし、体調は大事です。ただ、この文章から採用側が受け取るのは「事務なら楽そうだから」という印象です。
事務は座っていられますが、締め切りに追われますし、複数の依頼が同時に来ます。逆に、事務に転向した方が座りっぱなしで腰痛になることも。「楽そうだから」で来た方が続かないことを、採用側は知っています。
書き方を変えるとこうなります。
直した例
「前職では、接客をしながら日報の作成と在庫の入力も担当しておりました。人と接することよりも、正確に記録を残す業務のほうが自分に合っていると感じ、事務職を希望しております。前職で身につけた対応力も、来客や電話の場面で活かせると考えております。」
「今の仕事がつらいから」ではなく、「この仕事のほうが自分に合うから」。同じ転職理由でも、この向きにするだけで印象が変わります。
「未経験可」と書いてあっても、経験者を探している求人があります
これは知っておくと、落ち込まずに済む話です。
求人票に「未経験可」と書いてあっても、本音では経験者を探していることがあります。応募を広く集めたいので、そう書いてあるだけ、というケースです。
見分ける手がかりはいくつかあります。
- 仕事内容が具体的で細かい(「月次決算補助」「受発注管理」など)ほど、経験者向けの可能性が高い
- 「経験者優遇」と併記されている場合は、経験者が来たら結局そちらが優先されやすいです
- 研修制度や教育体制について書かれている求人は、未経験を本気で受け入れる準備がある
もちろん、書いていないから応募してはいけないという話ではありません。ただ、通らなかったときに自分を責めなくていい理由にはなります。
それでも決まらないときの回り道
ここからは、履歴書の話から少し離れます。
正社員の事務職に応募し続けても決まらない。そういう時期が続いたら、派遣・パート・紹介予定派遣という入り口も考えてみてください。
「正社員以外は妥協」と感じる方もいると思います。でも、事務の実務経験が1年でもあると、その後の応募のしやすさがまったく変わります。未経験のまま応募し続けるより、近道になることがあります。
ただし、選ぶときに条件がひとつあります。
事務としてのスキルが上がらない職場を選んではいけません。
たとえば、任される仕事がデータ入力だけで、電話も取らない、書類も作らない。そういう職場に1年いても、履歴書に書ける経験はほとんど増えません。
見学や面接のときに、こう確認してみてください。
- どこまでの範囲の仕事を任せてもらえるのか
- 電話応対や書類作成も担当できるのか
- 正社員登用の実績があるか(制度があるかではなく、実際に登用された人がいるか)
正社員登用については、ひとつだけ心構えを。「制度はあるが、実際にはほとんど登用されない」というケースもあります。 期待しすぎず、「あればラッキー」くらいに構えておくほうが気持ちが楽です。
登用されなければ、そのときは事務経験者として次の求人に応募できます。それも十分な前進です。
今日のチェックポイント
ご自分の履歴書を、この7つで確認してみてください。
- 応募先が一般事務・営業事務・経理事務のどれかを確認し、それに合わせて書いたか
- ビジネスメール・電話応対の経験を書いたか
- エクセルとワードで「何が、どこまで」できるかを書いたか
- 履歴書をパソコンで作ったか(手書きなら行がまっすぐか)
- 30代後半以降なら、「初心者です」ではなく落ち着いた対応力を前に出したか
- 志望動機が「今がつらいから」ではなく「この仕事が自分に合うから」になっているか
- 落ちても、それが自分の価値の話ではないと分かっているか
未経験の方の履歴書で、私がいちばん見たいのは、この人に何を頼めるのかが分かることです。
経験がないことは、書かなくても伝わります。書いてほしいのは、すでに持っているもののほうです。

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