「家から近いから応募した、というのが本音なんだけど、書いていいのだろうか」
「福利厚生が整っているところを選んだ。でも、そう書いたら印象が悪いだろうか」
こんにちは、めくると申します。中小企業で採用の仕事を10年以上担当し、今も毎月50件ほどの履歴書に目を通しています。
先にお答えします。
「家から近い」は書いて大丈夫です。会社にとってもプラスになります。
「福利厚生が充実している」は、書かないほうがいいです。
同じ「条件で選んだ」ように見えて、この2つは扱いがまったく違います。何が違うのか、順にお話しします。
「家から近い」がプラスになる理由
採用側が応募書類を見るとき、心の中で必ず確認していることがあります。
「この方は、続けて通ってくれるだろうか」
遠方から応募してきた方には、正直なところ慎重になります。交通費もかかりますし、何より「通勤してみたら思った以上にしんどかった」と早くに辞めてしまう例を、何度も見てきているからです。
裏を返せば、近いことは、その心配がまるごとないということです。
- 雨の日も雪の日も、無理なく通える
- 子どもの急な発熱でも、すぐ帰れる
- 通勤で消耗しないぶん、仕事に力を使える
これは会社にとって、はっきりした利点です。遠慮せずに書いてください。
ただし、書き方にひとつだけコツがあります。
もったいない例
「自宅から近く、通いやすいため志望いたしました。」
事実ですが、これだけだと「近ければどこでもよかった」と読めてしまいます。
直した例
「自宅から自転車で15分の距離ですので、長く安定して通うことができます。前職では事務として請求書の作成と電話応対を5年間担当しており、その経験を貴社でも活かせると考えております。」
近さは「長く続けられる理由」として書き、そのあとに自分の経験を続ける。 これで「通いやすいから」だけの応募ではないことが伝わります。
「福利厚生が充実」を書かないほうがいい理由
こちらは逆です。書くと損をします。
理由は「わがままに見えるから」ではありません。どの会社にもあるものだからです。
もったいない例
「産休・育休制度が整っており、研修制度も充実している点に魅力を感じ、志望いたしました。」
この文章の問題は、他社の求人にそのまま出しても通用してしまうことです。応募先を選んだ理由が、ひとつも書かれていません。
読む側には、こう映ります。
- 制度が整っている会社なら、どこでもよかったのだろうか
- うちの仕事そのものには、興味を持ってもらえたのだろうか
「家から近い」との違いはここです。 近さはその会社だけの事実ですが、制度はどこにでもあります。だから片方は書けて、片方は書けないのです。
研修制度を書くのは、とくに注意が必要です
福利厚生の中でも、研修制度を志望動機に書くのは危険です。理由が2つあります。
ひとつは、その研修が自分向けではない可能性があること。
「研修制度が充実している」と求人票に書いてあっても、その中身は新卒や若手向けであることが少なくありません。
中途入社である程度の経験がある方に、ビジネスマナーや電話の取り方を一から教える研修は、あまり用意されていないのです。
ここで誤解しないでいただきたいのですが、「何も教えないので、全部ひとりで何とかしてください」という意味ではありません。
その会社のやり方、社内のルール、使っている書式やシステム。こうしたことは、当然入社してから教えます。 誰であれ、そこは知らないところから始まります。
用意されていないのは、社会人としての基本の部分だけです。名刺の渡し方、電話の取り次ぎ方、メールの書き出し。ここはすでに身についている前提で採用します。
つまり、「教えてもらえる環境」を志望動機に書くと、その基本の部分から教わるつもりなのだろうかと受け取られてしまう。そこが心配されて、見送りになることがあります。
もうひとつは、話の筋が合わなくなること。
経験者として応募し、それに見合った給与を希望する。その一方で「教えてもらえる環境に魅力を感じた」と書く。この2つは、読む側には矛盾して見えます。
教えてもらう前提の方に、経験者としての給与を出す判断はしにくいのです。
未経験での応募でなければ、教育や研修の話は書かないでください。 それは志望動機ではなく、条件の確認です。
ワークライフバランスは、いちばん誤解が生まれやすい
最近とても増えているのが、この書き方です。
もったいない例
「ワークライフバランスを大切にしながら、長く働ける環境を求めて志望いたしました。」
働くうえで大事なことですし、そう考えるのは当然です。ただ、履歴書の志望動機に書くと、意図とは違う伝わり方をします。
理由1:言葉の意味が人によって違いすぎる
ワークライフバランスという言葉が指すものは、人によってまったく違います。
前の職場で毎月80時間近く残業していた方にとっては、月10時間の残業でも「バランスが取れている」と感じるかもしれません。一方、残業ゼロを想定している方もいます。
この差が、履歴書の一文からは読み取れません。 採用側は「どのくらいを想定しているのだろう」と分からないまま、判断できずに止まってしまいます。
理由2:読むのは、これから一緒に働く人でもある
これは知っておいていただきたいことです。
応募書類を見るのは、採用担当だけではありません。受け入れる部署の人が目を通すこともあります。
その人たちは、忙しくてやっと人を増やしてもらえるところです。そこに「休むこと」を先に書いた書類が届くと、こう考えてしまいます。
この方が休んだ分は、誰が引き受けるのだろう
休むことが悪いという話ではまったくありません。 制度は使うためにあります。
ただ、まだ会ってもいない段階で、休む話が先に来ると、受け入れる側は身構えてしまう。それだけの話です。順番の問題なのです。
では、条件はいつ確認すればいいのか
「書かないほうがいい」とお伝えしましたが、条件や働きやすさを確認しないまま入社してくださいという意味ではありません。
条件は、面接で聞いてください。 ただし、聞く順番があります。
仕事の話を聞き尽くしてから、最後に聞く
面接では、まず仕事の中身を深く聞いてください。
- 具体的にどんな業務を担当するのか
- 一日の流れはどうなっているのか
- 今いる方は、どんなふうに仕事を進めているのか
- 入ってすぐ任される範囲はどこまでか など
こうして仕事の話を聞き尽くしたあと、最後に待遇のことを聞く。
この順番だと、相手にはこう伝わります。「仕事の内容に興味を持ってくれて、そのうえでこの会社をもっと知りたいから、待遇まで確認しているのだな」
同じ質問でも、順番が違うだけで受け取り方はまったく変わります。最初に休みや給与を聞かれると、仕事そのものへの関心が薄いように見えてしまうのです。
求人票に書いてあることを、繰り返さない
もうひとつ、よくあるもったいない書き方があります。
もったいない例
「土日祝がお休みで、賞与年2回、残業も少ないという点に魅力を感じました。」
これは、求人票をそのまま書き写しただけです。読む側にとって、新しい情報がひとつもありません。
採用側は自社の求人票の内容を当然知っています。そこに書いてあることを返されても、判断材料は増えないのです。
志望動機に書くべきなのは、求人票に書かれていないこと。 つまり、あなた自身のことです。
志望動機が思いつかないときの手順
とはいえ、「条件以外に書くことがない」という方もいると思います。手順にすると、こうなります。
1. 求人票の「仕事内容」の欄だけを、紙に書き出す
条件面は一度忘れて、業務内容だけを箇条書きにします。「電話応対」「請求書作成」「来客対応」といった具合です。
2. 自分がやってきたことを、隣に書き出す
職種が違っても構いません。「レジ締め」「予約の電話受付」「在庫の発注」など、細かいことほど書いてください。
3. 重なる部分に印をつける
「予約の電話受付」と「電話応対」、「レジ締め」と「請求書作成」。完全に同じでなくても、近いものは線でつなげます。
4. その重なりを文章にする
直した例
「求人票を拝見し、電話応対と請求書の作成が中心の業務と理解いたしました。前職では飲食店で予約の電話受付を担当し、日次の売上集計も行っておりましたので、その経験を活かせると考えております。自宅からも近く、長く続けられる環境だと感じております。」
条件の話(近さ)は、最後に一行だけ添えています。この順番なら、まったく問題ありません。
求人票から応募先の困りごとを読み取る方法は、こちらの記事で例を挙げています。
定型文をそのまま使わない
最後に、事故の話をひとつ。
インターネットで見つけた志望動機の例文を、そのまま使う方がいます。気持ちは分かりますが、2つの危険があります。
ひとつは、他社の名前が残ってしまうこと。
前に応募した会社名や、例文サイトに書かれていた業種がそのまま残っている書類を、私は何度も受け取っています。これは一発で分かりますし、中身を読む前に評価が決まってしまいます。
もうひとつは、誰が書いても同じになること。
定型文は、当たり障りがないように作られています。だから、同じ求人に応募した5人が、ほとんど同じ志望動機を出してくることが実際にあります。
そうなると、選ぶ側は中身で比べられません。多少ぎこちなくても、自分の言葉で具体的に書かれた文章のほうが、はるかに強いです。
今日のチェックポイント
ご自分の志望動機を、この6つで確認してみてください。
- 「家から近い」を書くなら、長く続けられる理由として書いたか
- 福利厚生や研修制度を、志望動機の中心にしていないか
- 未経験の応募でなければ、教育や研修の話を外したか
- ワークライフバランスという言葉に頼っていないか
- 求人票に書いてあることを、そのまま書き写していないか
- 求人票の仕事内容と、自分の経験の重なりを書いたか
条件で会社を選ぶのは、まったく悪いことではありません。むしろ当然のことです。
書くか書かないかは、印象の問題ではなく、伝わる情報量の問題です。条件だけを書くと、あなた自身のことが何も伝わらない。それがいちばんもったいないのです。


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